63万部突破、芥川賞と文藝賞のダブル受賞作品。
ちなみに、映画化もされています。
私は小説を読んだあと、映画も観ましたが
映画の方がちょっと、コミカルで楽しい感じがしました。
どんな世代の女性が見ても
なんだか色々、じーんと来る場面が多いんじゃないかと思います。
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本の概要
おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子著
内容
75歳になった、「桃子さん」が主人公。
全体的に、生まれ育った東北弁で語られています。
一人暮らしの孤独を、妄想が生んださまざまな人物が取り囲みます。
自分が頭の中で作り上げたものなのに、
驚いたり、会話したり。
人の心を「地球のプレート」と言って、
何層にも重なる複雑さを表現してみたり、
亡くなった「ばっちゃ」と会話したり、
いきなり「絨毛突起」が出てきたり・・・
人生を振り返りながら、今の「老い」に向かい合う。
特に、愛する夫「周造」との出会い、家庭を作ること、そして周造の死。
周造に対する本当の想い。
子どもたちからは疎遠になり、夫に先立たれた現実。
だけど、桃子さん自分自身のほんとうの気持ちは・・・
「1人になって、本当の自分を手に入れたかった」
ここに行き着き、さらに進化していく、桃子さんのストーリー。
印象に残ったキーワード
オラダバオメダ
頭の中で流れるこの言葉。
音楽に乗って、ジャズセッションが始まります。
要するに、「おれはおまえだ」
脳内の自分が、自分に言いはじめ、にぎやかな問答を繰り広げます。
年を取り、「ひとり」の時間が増え
自分と会話を始めるこのシーン。
実は、病院の待合室で何時間も待っているご老人たち、
みなさんこんな妄想を繰り広げているのかも?
そう考えると、思考というものはそもそも自由だなあと感じます。
他にも、作中には過去の様々な年代の「自分」が出てきて、
スッとその頃に戻ります。
人それぞれ、発表するほどでもない様々な人生を積み重ねてきていて
思い出して後悔したり、肯定したり、
そうやって生きていくものなのかな、と。
自分との会話。
桃子さんは、悲しみの中でも常に楽しいことを考える性格なのかも、と感じました。
おら思うども、人のために生ぎるのはやっぱり苦しいのす
愛する周造を亡くし、悲しみの中にいる桃子さん。
周造のために尽くし、子どもたちを育てあげたけれど
本当の自分の気持ちにやっと気づきはじめます。
愛する夫に合わせて羽を折りたたみ、その中で羽を動かしてきた。
そのことへの葛藤。
「愛」を、「自分より他人を大切にすること」と思って生きてきた。
でも
伸び伸びど羽を広げたい。空を自由に飛び回っていだい。
もっと自分を信じればよがった。愛に自分を売り渡さねばよがった。
自分との対話の中で、ほんとうの想いが見え隠れしてくるシーン。
年を重ね、経験してから気づくことって、
やっぱり重みが違います。
私も、しがらみから抜け出したい、自由に生きたいと強く感じました。
あと、そんなに愛し抜いた人を見送れるって、幸せなんじゃないかと。。。
本人は色々後悔しているけど、正直うらやましいと感じてしまいます。笑
出会いからして、少しロマンチックな設定です。
周造が亡くなってからの数年こそ、自分が一番輝いていた時ではなかったのかと桃子さんは思う。
人を喜ばせたい、従順に、人の期待のそうように生きて行くことが大事、と思ってきた人生。
だけど、夫が亡くなってからの今こそが、本当に望んでいた人生だと気づきました。
気づくために費やされた時間が、すなわち桃子さんの生きた時間だった。あいやぁ、というより他はない。
時々思い出す過去は、決して間違いじゃなかった。
幸せだと思って生きてきた。
人のこころって、とても一言では表せない奥深さがありますね。
その時には気づかない、後で気づくことってたくさんあります。。
まとめ
全体的に、コミカルにできてはいるものの、
女の人生、価値観などについてとても色々考えさせられました。
夫に先立たれた奥さんの方が、長生きして元気だとか聞いたことが・・・ゲフンゲフン。
桃子さんのように、本当に愛する人を失っても、実はそうやって「自由」を感じ、
孤独の素晴らしさに気づくものなんですね。
悲しさを抱えつつも、嬉しくて仕方ない感じもあって笑えます。
人って、死ぬまで進化していくのかもしれません。
桃子さんは、妙に哲学的で、本質を追求するマジメさもあり
応援したくなりました。
東北弁のあたたかみもあり、ちょっとウキウキする楽しい小説でした🍀